鳥と手打ちうどん

西東京市に次男の自転車を借りて乗って行った。2年ほど前まで住んでいた土地。一度自転車で行ってみたかった。約1時間で予想以上にあっさり到着。気がついたら見慣れた田無タワーがすぐ近くにあった。昔住んでいた家の周りをぶらぶらチャリンコをこいで昼近くになり、飯でも喰うかと思ったとき、ひらめいた店があった。

そこは、住んでいた時はなにやら怪しげで敬遠していたうどん屋。うどん屋なのにアヒルや鴨を飼っていて、そのため外観があまり清潔に見えなかった。

でも、実は美味いらしいという噂は耳にしていた。

小さい子供と家族で行くのはためらうが、今日は一人。勇気を出して引き戸をガラガラっと開けて入ると、人の良さそうな旦那が先客と談笑していた。

壁に貼った品札から肉もりうどんを、これまた人の良さそうな、でも細かいオーダーは苦手そうな奥さんに頼んだ。夫婦で切り盛りしているようだ。すると店主が奥で竹が軋むような音をさせたりトントンという音を立てはじめる。

やや、これはもしや、、と思いながら待つと、まさしく手打ちうどんが運ばれてきた。

適度にコシがある平打ち風の麺で喉越しがよい。「なかなかうまい・・・」と思いながらうどんをすするうち、地元らしきお客さんがどんどん入店してくる。年齢層は少なくとも50代以上だ。店の奥さんと会話する内容から、初めての来店ではなく、このお店が愛されている感じが伝わってきた。

店内に置いてある雑誌の中に、漫画雑誌などに混じって一冊だけレース鳩の愛好者向け雑誌があった。ページを開くとなかなかマニアックな情報が並んでいる。

何故、お店の敷地に鳥類を飼っているのかなんとなく察しがついた。

初めての来店だったし、夫婦は忙しそうだったので鳥に関する余計な質問はせずに、僕は食べ終えると、すぐにお金を払いご馳走さまと言って、店を出て自転車に再び跨った。意外な味わいのある店だ。離れてみて近づく距離というものもあるのだ。